アメリカのバイブセッション

バイブセッションという言葉をみなさんは聞いたことがありますか?バイブセッションとは現在の米国経済の状態と、人々が感じる気持ちの間の大きな断絶を意味する新しい経済用語、というか合成言葉です。

「vive(雰囲気や感じ方みたいに使われます)」と「recession(景気低迷)」を合わせて、実際の経済状況とは別に、経済主体が心理的不景気を感じる状況を意味するそうです。例えば新しい経済用語でよく使われているファイナンスとテクノロジーが一緒になったフィンテックみたいな感じですね。

このバイブセッションを私が知ったのは、イギリスのガーディアンの記事からです。1963年からアメリカの成人の感情、行動、動機を追跡してきたアメリカの市場、世論調査​​をしているハリスポール​​を使ってイギリスのガーディアン社が独自に調査をした結果の報告記事によると、ハリスの世論調査の結果、S&P 500の指数は、今年これまでに16%ほど上昇していますが、回答者の59%はS&P500指数が今年減少していると誤って答えたそうです。そしてまた51%がアメリカの失業率が50年ぶりの高い水準に近づいていると誤って信じていることがわかったそうです。ちなみにこちらは実際のFREDからの失業率のグラフです。

ガーディアン社によるとこの世論調査によって、多くのアメリカ人が政府が報告した実際のデーターに気づいていないか、信じていないことがわかったということです。アンケートに答えた大多数のアメリカ人はGDP成長にも関わらずアメリカが現在不況にあると信じていたということです。アメリカのバイブセッションの原因としては、主にニュースメディア、特に、決して来なかった2023年の不況を予測する一部のエコノミストなど、ドラマチックで否定的なニュースに焦点を当てるように駆り立てる市場インセンティブのせいにされているともありました。そして大衆自体もネガティブなバイアスを持っているとも言われています。

確かに心理学的にも人々はポジティブなニュースではなくネガティブなニュースを見たり読んだりする傾向がありますよね。

そして実際に、それが株式の世界でも現れたりもします。というのも、投資家が企業収益、経済成長、株式評価、消費者支出など、実際に役立つ経済データを深く掘り下げることはせずにニュースの見出しやセンセーショナルなニュースを好むと言われているからだそうです。

例えば、マーケットに現れる調整は私がアメリカで比較的長く投資をしてきていても、いつもマーケットに参加している人を不安にさせる材料の一つだなと感じたりもします。これは特に実際にアメリカに住んで、投資を長くしている人で経済ニュースも読んだり聞いたりしている人にとっては頷いてもらえることだと思います。SNSが活発になって、情報がグローバル化されるようになってからは更にそういった傾向が大きくなっているようです。

というのも実際には、こういった調整はアメリカの株式マーケットでは結構普通に起こっていることでもあるんですよね。

「市場は直線的には上がらない」というのはアメリカで投資をしている私たち、長期投資家の間では共通の認識です。これは私が時々友達とするハイキングとも一緒です。ハイキングをしたり山登りをしたりする時に、時々休憩を入れながらのぼります。あれを想像していただくとわかりやすいと思うのですが、マーケットの流れも、登って行くときに途中で調整という名前の休憩を入れながら、登っていく感じです。まぁ、たまに息切れしてとんでもなく長く休憩に入ることもありますが、それがリセッションみたいな感じでしょうね。

園芸家の私は果樹の成長なども同じように感じることがあります。ハイイールドのあった年の翌年は、(イールドという言葉は経済だけではなく、こうした園芸の世界では収穫量のことも示して使われます)収穫の多かった年の次の年などは収穫が少なくなる時があります。植物もちょっと休憩して、それからまた成長して収穫量が増えたりします。

長くマーケットの動きをボォっと観察していると、私だけかもしれませんが、時々チャートが生きているように動いているなと感じることがあります。まぁマーケットに参加しているのは結局は人間ですから、企業の業績によって動くのが本当のところと言いたくても投資をしているのは人間ですから結局は人間の感情で動いているというところもあります。

過去のマーケットの動きをとっても、結構こういった下落(または調整)が入った時には、新しい情報を受け取った投資家、つまり人間側が処理をするのにパニックになったりして急激な調整が入る時もあるし、あとは考えるのにちょっと時間がかかったりしながら調整に入るときもあるように感じます。

だから調整が入った時は、すぐにこれは経済の弱気の兆候だとは受け取らずに、ん?もしかしてマーケットがバランスをとるために、というか良いバランスに近づけるために、調整が入っているのかなと考えることも、これから長く投資をするつもりなら重要になります。

アメリカマーケットの最近の動きを見て、そろそろ外に出る頃かどうかと疑問に感じる人も増えてきているとは思うのですが、長期で投資をしていく一般人の私たちは株価の動きには一喜一憂せずに、マーケットに居続けることが重要になります。

こういった今のように不確実なことが多い時は、ニュースや記事などで投資銀行のアナリストや経済アナリストの皆様が過去の例を持ち出し、そして説明し出して、市場が下落する前には最高値を記録して、史上最高値が弱気相場の始まりだと言い出すこともあります。でも、史上最高値を出したあとが弱気相場に突入するサインだと見るのは誤解に繋がる可能性も出てきます。というのも強気マーケットにある時は史上最高値を出したあとは、また史上最高値を出すということもあるからです。

投資の神様と言われるウォーレンバフェットさんは「If past history was all that is needed to play the game of money, the richest people would be libraiansもしも過去の歴史がマネーゲームのすべてだったら、最も裕福な人々は図書館員になるだろう。​​
とも言っています。

今はSNSなどで、経済アナリストでもない一般の投資家が、暴落やリセッションを煽るような情報を流すこともあるので、最近投資を始めたばかりの人は不安にもなるわよねぇと思います。そういった情報を見たり聞いたりしても「参考程度耳半分」といった気持ちを忘れずに冷静に受け止めていただきたいなぁと思います。もちろん、それは私の発信も含めてです。

経済を長い目で見るとマーケットにいる以上、いつか必ず下落はやってきます。でもこれはもう経済の仕組みのひとつなんだなと思うことです​​。「もしもマーケットが暴落したら」「もしもリセッションに突入したら」このもしもの質問に気を取られるのは簡単です。だって投資は不確実性という名前のリスクがつきものだからです。だからウォール・ストリートのアナリストさんたちでさえ、マーケットの予想を見事に外すこともあるわけです。


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